あれから私は、辛いことを忘れるように他愛もない話をしながら、3人で笑ったり恋バナに華を咲かせた。

「そういえば、莉依のところの姫野組、落ち着いてきた?」

「うん。従兄弟が今若頭代理として組長代理の奏希おじ様と色々やりながらまとめてくれてるよ。」

「姫野組、復活ですわね!」

うん。
でもね、その従兄弟が女性一人に手こずってて…。

話を聞く限り、女性が一枚以上も上手のようで。

周りの人たちのお陰で、姫野が変わらず存在できている。

従兄弟に至っては、ヘタレすぎて笑えてくるけどね。

仕事ではキチッとするのに…。

残念な奴だ。

「まぁ、てこずってるけどなんとかなってるよ。」

「いずれは戻るんでしょ?」

「…うん。いずれね。来年かもしれないし、5年後、10年後かもしれないけど。」

「莉依さんが組長ですか!女組長、素敵ですわ。」

椿はうっとりしながら呟く。

あのね…簡単に言うけど、大変なんだからね!と心の中で毒づく。

話をしていると、扉をノックする音が聞こえる。

「は…はい!」

「満里奈ちゃん、椿ちゃん、お昼ご飯食べてってね。」

優しい口調で優里さんが言いに来てくれた。

2人は美人!と騒ぎながらも、いただいてきます!と元気に返事をした。



組のみんなとご飯を食べて、また女子トークしていたらあっという間に時間が過ぎていった。

満里奈と椿は、晶さんと礼ちゃんに送ってもらうことになった。

「じゃぁ、また明日学校でね!」

「莉依さん、ゆっくりしてくださいね。」

二人は車に乗り込むと、目的地に向け出発していった。

心配して来てくれる人がいる。

私はなんて恵まれてるんだろう。

昨日倒れたばかりなのに、呑気に考えている私がいた。



刻一刻と、確実に魔の手が進んでいること。

清宮と姫野組を巻き込む事件が来るだなんて、このときの私には考えももしなかったんだ。