お父さん、お母さん、毎日忙しないけれど、充実していて楽しいよ?

お父さんとお母さんが生きていたら、樹さんや孝さん達とどんな会話をしながら、私たちを見ているだろうね。

縁側に座ってそとの景色を見ていると、風が優しく吹いた。

でも季節は、少しずつ冬に向かって動き出している。

「肌寒くなってきたなぁ…。」

「これ羽織っておけ。」

「ひゃぁ!?」

後ろから声をかけられ、変な声が出てしまった。
油断してた。
安心しきってて油断してた!

「お前、色気のねぇ声…。」

笑いを堪えながら言う翔ちゃん。
その姿は本当に綺麗。

イケメン通り越して美しいよ。

「翔ちゃん。色々とありがとう。」

色々とは、澤田の事や私の行動に対しての優しい言葉。
私を一番に考えて側に居てくれた。

翔ちゃんの"信じろ"と言うことが、どれだけ心に響いて自分を保てたか…。

すると、翔ちゃんは私の隣に腰かけてきた。

「あれから一週間、少し落ち着いたか?」

「うん。嘘のように夜眠れてるの。」

「そうか。良かったな。」

優しい言葉をかけながら、私の頭を撫でる。
そして、真剣な表情で話をまた始めた。

「莉依。」

「ん?」

「これから先、今回みたいに危険なことが沢山起こるかもしれねぇ。」

極道の世界とは危険と隣り合わせ。
いつ死ぬかもしれない。

狙われることもこれから何度もあるだろう。

「だが、それを理由に手放す気は更々ねぇ。」

ん?
手放す?
何をだ?

あ…。
清宮組をか!

そう自分で解釈していると、翔ちゃんが呆れたように言う。

「まわりくどかったか…。」

溜め息を吐いて、頭を強めにかいていた。

どういうこと?
回りくどく何かを伝えようとしてた?

怒られるのか!?
そもそも思い当たる節が、何個もありすぎて…。
ここは潔く謝ろう。

「ごめ…。」

「俺の傍にずっといてほしい。」

…。
へ?
まてまて、怒られてはない?

「翔ちゃん?」

「お前、今謝ろうとしたのか?」

困った顔をして翔ちゃんは私を見る。

「え…小さい頃、翔ちゃんのお気に入りの車のプラモデル壊したこと怒ってる?」

私の言葉に、笑い出す翔ちゃん。

「ははっ。あれ、お前だったのか。あの時はショックだったの覚えてるな。」

懐かしいなと言う翔ちゃん。
…違うの?

「じゃぁ、鬼龍の時に、寝てる翔ちゃんに落書きしたこと怒ってるの?」

「まただいぶ前の話を出すなぁ。あれは、礼が言い出したことだろ?礼を絞めたから良いんだよ。」

じゃぁ…何だ?

「え…じゃぁじゃぁ、一昨日、翔ちゃんのお酒のおつまみを食べちゃったこと怒ってるの?」

「何で俺が怒ってる前提?おつまみくらいで怒んねーよ。」

凄く笑ってるけど…怒ってないのか?
じゃぁ、何で恐い顔したのかな?