翔樹side
東の繁華街はいつもなら、組の奴らなり族の奴らなりがごった返しているのに、人っ子ひとりいない。
静かすぎる。
「何だか、静かすぎて気味悪いな。」
言葉とは裏腹に、表情が楽しそうな龍也。
「龍也様は昔から変わりませんね。こんな状況で笑顔でいるのは。」
「晶さんと同意見です。楽しんでますよね?」
そんな龍也の姿に苦笑いの晶と新。
新は、タブレットを操作しながら慶一郎と情報を的確に纏め上げていた。
「大和、若、この繁華街には人はいない。澤田の奴らは、澤田の本拠地にいるかもしれない。」
やっぱりな。
莉依を確実に捕らえるために、こっちを空にして、澤田に集中させてるってことだな。
親父たちのところは大丈夫だろうか。
清宮、川城と澤田組が配置されてると話しに聞いたが…。
親父たちは大丈夫と言っていたが、何せ予想を遥かに越えるほど澤田組の人数は多いのだ。
スマフォを見ると、ディスプレイには鴻巣の文字。
「はい。」
『清宮の若様ですね、報告があります。』
"報告"
その言葉を聞いて俺はスピーカーにし、ここにいる皆が聞こえるようにする。
鴻巣には許可をとって。
『皆様、澤田から撤去命令がありました。おそらく、莉依様が接触したのでしょう。』
もう接触したかー…。
澤田の事だ。
何かしらの手をうってくるはず。
最悪な状態にならなければいいが…。
『莉依様が澤田に、清宮、川城、神子芝に配置している組員を退去させるように条件を出し、澤田はすぐその条件をのんだそうです。』
澤田が…。
そんな簡単に条件をのむだなんて。
相手が莉依だからか?
『私も今からそちらに向かいます。あなた方もすぐ澤田の本拠地に乗り込んでください。入り口には500人、中庭前に1000人、莉依様がいる中庭には3000人もの組員が配置されています。』
「了解です。もうすぐて本拠地に着きます。着き次第、乗り込みます。」
お願いします。
そう言って鴻巣は電話を切った。
「まずは、入り口の500人だ。」
俺の言葉と共に、皆が士気を高め俺の後に続く。

