闇に咲く華
















「さぁ、撤退させたぞ?渡してもらおうか。」

すんなり条件をのんだ澤田…。

本当に狙いは…、他にあるのだろうか。

「嫌だ…、と言ったら?」

探れるだけ探ってみようか。
何処まで引き出せるか…。

なるべく、自分の身は守れるように間合いをとって…。

「おやおや、約束を破る気かい?それは困るのう。」

困ると言いながら、顔は楽しそうに笑っているが…。

その目は狂っている。
こいつ、正気じゃない…。

「お前、これ以外に何か企んでいるでしょう?」

私の言葉に、澤田は体が少し反応した。

すると、大声で笑い出す。

「ふ…はは…はははははははは!流石、姫野功希の娘だ。勘が鋭い。」

そう言うと、澤田は右手を上げる。
その合図と共に、澤田の組員が何処からともなく出てきた。

その数、ざっと数えて200人。
その人数に、予想はしていたものの驚きを隠せないでいた。

私を取り囲む澤田。

一触即発な状態。

「何がおかしい。」

「赤い口紅を付けていると、凌佳そっくりだ。」

ねっとりとした口調で澤田は言う。

ーゾクリー

その言葉が合うかのように、体が震えてしまう。

私への、目付きが違う。

「その顔も、仕草も全て凌佳だのう。」

「…っ!?何が言いたい!」

そのねっとりした言葉に、思わず打ち震えてしまい、声がうわずってしまう。

落ち着くのよ莉依。
落ち着かなければ、奴の思う壺よ?

暗示をかけるように心に言い聞かせるも、震えは止まらない。

今にも倒れ込んでしまいそう。

「…あなた、関西の川上組と手を組んだの?」

やっと出た言葉に、澤田は眉ひとつピクリとも動かさずこちらを見ている。

この名前を出されても動揺しない…。
傘下に入ったことは誤報ということ?

「知りたいか?」

相も変わらず、気持ち悪い笑みを浮かべながら私に言葉を向ける。

動揺しないということは、傘下に入ったということではなく…同盟を組んだということ!?

「どういう条件のもと、他県の組と同盟を組んだ?」

「察しがいいのう。ワシがお前さんを手に入れる変わりに、中里の娘を渡す…という条件さ。」

優…杏さんを…?

川上組が…優杏さんを欲しているということ?

澤田はデータよりも、優杏さんの情報網よりも、私自身を欲している?

だから、データを渡さなくても、優杏さんがこの場に居なくても焦りの姿が見られなかったということ?

そして、川上組が手にしたいのは、優杏さんの情報網…。

中里夫婦の情報網は世界一と言われているほど強力なもの。
それを今も守られているのは、娘である優杏さんの力。

川上組はそこまでデータを調べている。

…まって。
そこまで調べられる情報力があるのにも関わらず、優杏さんの情報網を欲しがる?

「優杏さんを欲しがる理由は?」

「さぁのぉ。中里優杏を連れてこいとしか言われとらんからの。」

…澤田でも知らない理由。

何だろう。
嫌な予感がして仕方がない。

この澤田との抗争よりも、もっと大きな何かが起こりそうー…。