澤田組の本拠地は、ものすごく廃れた建物となっている。
元々の形がそうなのだが、改めてみると本当に凄い廃れている。
門前なのに血の臭いが凄い。
澤田は、今までにも手を掛けてきた者が沢山いるんでしょうね…。
警察に公にされてないものも必ずある筈。
奏希叔父様は、ヘドが出ると吐き捨てながら、言っていたのを思い出すわ。
『おやおや、1人で来たのかい。まぁ、どうぞお入り。』
スピーカーから聞こえた澤田國光の声。
相変わらず気持ち悪い声だわ。
タイミング良く聞こえたのは、きっとカメラで何処からか見ているからだろう。
中に入り裏に回ると、体育館ほどの広さの庭…とは言いがたいが、空き地のような所に出た。
そこには、縁側に大きなソファーに座って、気持ち悪い笑みを溢していた澤田がいた。
何故に他の組員がいない?
何故1人でいる?
「約束の物は持ってきたかね?」
澤田は、私の目を見ながら尋ねる。
「えぇ。お望みのUSBメモリーよ。私1人だから、優愛さんはいないわ。」
ほぅ。
そう声に出した澤田は、口角を上げながらこちらを見る。
本当に気持ち悪いったらありゃしない。
「まぁいい。そのUSBを渡してもらおうか?」
「…これを渡すには、条件がある。」
私が声を出すと、澤田はねっとりとした気持ち悪い笑みを更に私に向けて言い放つ。
「言ってみよ。内容によっては、叶えてやろう。」
「今、清宮と川城、神子芝に配置している組員を撤退させて。それが条件。のめなければ、渡すことはできない。」
体が震えてしまう。
何とか抑えながら、気丈に振る舞う。
澤田は私の言葉にニヤつき、いいだろうと言って電話を掛け始めた。
「撤退しろ。」
電話を切ると、また私にねっとりとした笑みを向ける。
どうやら、撤退してくれたようだ。
こんなにすんなり進んでいて、恐いくらいだわ。

