通話を切ると、俺は車にいる晶たちに声をかける。
「10分後、東の繁華街にて姫野と落ち合う。そしたら一気に澤田に攻め込む。」
「あらら。一息つく間もねぇか。」
烏丸は肩をあげながら言う。
何で余裕そうなんだコイツ…。
掴めねぇ奴。
「晶、龍也に連絡を入れろ。15分後に澤田の本拠地でと。」
「承知。」
いよいよ、澤田との抗争が始まる。
今この瞬間、莉依の小さな身体に背負わせてしまっているという罪悪感…。
だが、必ず守ってみせる。
お前を失うわけにはいかねぇ。
言わなきゃならねぇことが沢山あるんだ。
「姫ちゃん、1人で行ったんやろ?予想はしててんけど、地味に焦るな?」
「姫の行動は、常にハラハラさせられますしね。」
「全くだ。調べるこっちの身にもなれって言いたい。」
コイツらの表情は良い意味で落ち着いている。
だが、烏丸がキリッとした表情でツッコむ。
「油断すんなよ?澤田は色んな所をついてくるからな。気を引き締めろよ?」
「あぁ。」
莉依は、どんな思いで澤田のところに向かったのか。
「お前ら、澤田の組員には手加減なんてしなくていい。思いっきり殺れ。」
「マジで行きそうなの、翔樹やけどな!」
俺が言うと、礼がおちゃらけたように返す。
「確かに。若は本当、姫のことになると魔神級に恐ろしくなるかるな。」
「鬼龍の頃からの伝説だ。記録に残してるぞ。」
言いたい放題言いやがって。
てか、慶一郎の記録に残してるって何だ!?
そう言ってスマホを見ると、鴻巣からショートメールで連絡が入った。
ー神子芝へ配置されている澤田組員は、300人全てのしたのでご安心を。ー
「…鴻巣から、神子芝のところは大丈夫だとよ。」
俺の言葉に晶はホッと胸を撫で下ろす。
気が気じゃねぇもんな。
だからさっきっから、素が出てやがるんだ。
自分が傍に居れないことへのイライラから。

