深呼吸をして自身を落ち着かせる。
そうだ。
翔樹の言うとおり、周りが見えなくなってしまってはダメだ。
莉依はきっと、清宮も川城も神子芝も俺たち姫野も守るために1人で行ったんだ。
それは前から予測してたことじゃねぇか。
なら、俺らは俺らで組の長を守るために動くこと。
翔樹もそう判断している。
やっぱり、アイツには敵わねぇな。
俺も負けてらんねぇ。
「悪りぃな、失態を聞かせた。10分後、東の繁華街で落ち合おう。」
『フッ。負けるなよ。』
それは自分に対してか?
澤田に対してか?
どっちもだろう。
俺は通話を切ると、大きく深呼吸し皆に視線を移す。
「10分後、東の繁華街にて清宮と落ち合う。そしたら一気に澤田に攻め込むぞ!」
俺の言葉に皆反応し、承知という言葉が響き渡る。
バカ莉依。
変な真似したら、承知しねぇかんな!
俺が乗った車を先頭に走らせる。
「大和…。」
優杏が不安そうな表情をする。
「大丈夫だ。必ず莉依を助ける。」
そう言って安心させるために頭を撫でる。
「莉依ちゃん、守るために身を犠牲にするんじゃ…。」
身を犠牲に…?
「考えすぎかもだけれど、澤田は莉依ちゃんをトラウマで壊して、自分のものにするって言ってたでしょ?私達を守るために、自分が澤田のものになろうとしてるんじゃ…。」
…莉依なら考えそうなことだ。
用心しなきゃだな。
「そうならないためにも、俺らが向かうんだ。」
10年前と同じように姫野の長を失うわけにはいかない。
そんなことさせてたまるか。
焦る気持ちを抑え付けながら、清宮と落ち合う場へ急いだ。
大和side end

