あんのバカ莉依!
よりによって、1人で行くかぁ!?
あー、これ清宮にシバかれるな…。
何で気づかなかったって…。
こんなところでグダグダしてても、この今の状況は変わらねぇ。
俺の勘が正しければ、莉依は1人で澤田のところに向かったはずだ。
「やはり莉依さんは、澤田のところに向かったようです。防犯カメラには、東の繁華街の防犯カメラに映ってました。」
東の繁華街って…。
もう少しで澤田のところに着いてしまうじゃねぇか!?
「大和!状況説明したで!今すぐ行けるようになっとる!」
「清宮の若に連絡が着いたぞ!」
俺は悪いなと謝罪をし、陽介が繋げたスマホを手に取り、電話に出る。
「わりぃな。」
『何だ。陽介から掛かってきたかと思いきや、大和にかわるから、そのまま待てと言われたぞ。何なんだよ。』
「緊急事態だ。」
俺の言葉に、翔樹の声色が瞬時に変わる。
『何があった。』
「莉依が、1人で澤田の本拠地へ向かった。親父さんの部屋に行ってくると言って…時間が掛かってるから見に行ったら、莉依の姿はなかった。東の繁華街の防犯カメラに映ってた。もう、すぐに澤田のところに着く頃だ。」
なるべく冷静に。
だが、俺も焦っているのか、早口になっているのが分かる。
最悪な事態になっている。
莉依が、殺られてしまったら、俺は親父さんたちに顔向け出来ねぇ…。
「翔樹!こっちもこれから急いで向かう!そっちも取り急ぎ澤田の本拠地へ向かってくれ!莉依が危ねぇかもしれねぇ!」
『大和。』
翔樹のトーンの低く落ち着いた声が、スマホから聞こえる。
『組長補佐なんだろ?そのお前が動揺してどうする。』
その言葉に俺はハッとさせられる。
確かに焦っている。
これで莉依の身に何かあれば、俺は親父さんたちに顔向け出来ねぇ…。
補佐という立場なのに、焦って…。
『本当ならば、ぶん殴ってやりたいところだが、今は嘆いている場合じゃねぇだろ?今、莉依の居ない姫野を纏めるのは、補佐であるてめぇの仕事だ。』
周りが見えなくなってどうする。
翔樹の言葉が胸に突き刺さるが、すっと染み込んでいくー…。
焦っていた自分が嘘のように落ち着いていく。
我ながら恥ずかしい失態だ。

