あと少しで出発する時間となる。
私は髪を纏めて一本に縛り、真っ赤な口紅を付け、動きやすいパンツのスーツに身を包んだ。
深呼吸をして皆を見る。
大和が私の前に来てひざまづくと、皆も一斉に同じ体勢をとる。
「必ず、お守りすることをお誓いいたします。我が組長。」
「本当、一丁前に言うわね。」
私が笑みを漏らしながら言うと、大和も笑みを漏らしながら言う。
「分家は、本家の者を守るために存在するからな。」
「相変わらずね。」
私と大和のやり取りに、組員は少し緊張が解れたのか柔らかい表情になる。
でも…ごめんね。
皆は連れていかない…。
私1人で向かわなければならない。
「莉依、あと少しで準備が整う。」
「わかったわ。」
ここは慎重にいかなければ。
大和は直ぐ私の考えに気がつく。
私がこれから起こす行動もバレないようにしなくてはいけない。
「最後に、父の部屋に行くわね。少し皆はここで待ってて。」
1人で集中したいから…と、何とか理由をつけて抜け出すことが出来た。
私の部屋から直ぐの角を曲がり、縁側を過ぎたところにある父の部屋。
その部屋に入り、大きく深呼吸する。
きっと直ぐ勘づいて、この部屋に向かって来るかもしれない。
「早く出ないと…。」
一番奥の窓から出れば、誰にも気づかれずに抜け出せるはず。
データは、さっき新から預かり私の手元にある。
まぁ、データは姫野でも残してあるだろうけれど。
「部屋に居れるのは5分…。」
気づかれる前に出るのに5分か…。
仕方がない。
私は部屋の鍵を掛け、この部屋全てのカーテンを閉める。
そして窓枠に手を置いて、静かに出る。
「姫野も、優杏さんも…翔ちゃんたちも…私が守るからー…。」
私のその言葉は、静かに闇に消えていった。

