澤田が動き出しているということは、莉依も何かしらの形でこの事実を知ったということか?
莉依は…、どこまで知っているんだ?

俺の心を読み取ったのか、大和が代弁するかのように鴻巣に聞く。

「その事、莉依は知ってるんですか?」

「大和様…。凌佳様の事を澤田が好いていた事はご存じでした。先程、聞かれましたから。きっと、功希様が何かしらの形で莉依様に知らせられるようにしていたのでしょう。ですが、莉依様を手に入れようとしていることはまだ…。」

「莉依の事だ、直ぐに勘づくはずだ。」

そう…莉依は人一倍勘がいい。

そして周りを巻き込ませないために…。

「一人で何とかしようと…、本当に動くかもしれねぇ。」

そうなると、澤田の思う壺だ。

その時、親父が俺の目の前に来て真剣な眼差しを向けていた。

「翔樹、組長命令だ。」

「は?こんな時に何だよ!?」

何故にこのタイミングでだ?

「翔樹、晶、礼、慶一郎は莉依ちゃんを守るために動け。清宮の事は心配すんな。」

必ず守るんだろ?

そう言う親父の目にはうっすら涙が見えていた。

「龍也もだ。」

孝さんも同じように、龍也に指示していた。

「清宮の若、大和様、川城の若、私は裏から莉依様を守れるように動きます。あなた方は、堂々と正面からぶつかってください。」

鴻巣は、表情をもとに戻し、しっかりとこちらを見ていた。

「奏希様、もう1人のシークレット組員の事…話しておいた方が言いかもしれません。」

「あぁ。必ず動いてくれるはずだ。」

奏希さんの口から出たのは、まさかの人物であった。

1日でこんなに驚いたことは、人生で初めてだ。

「烏丸信吾に会ったことあるだろ?そいつはもう1人のシークレット組員だ。」

開いた口が塞がらねぇ。
晶達も、大和達も開いた口が塞がらねぇようだ。

この前会ったばっかりの奴が、シークレット組員?

良く見ると親父達も驚いている…。

それだけ、姫野は謎だらけだったことが解る。

「烏山信吾は、初代白龍の副総長にして、実力も兄貴に負けず劣らずだったんだ。今は店をやりながら秘密裏に澤田の事を探っている。我々は組を守る。清宮の若はそいつに会って動けるようにして欲しいことを伝えてくれ。大和達は、莉依ちゃんの動きを注意していてくれ。」

奏希さんが言うと、鴻巣はもう時間ですので戻ります。必ず、お守りしましょう。

そう言い残して、ここを出ていった。

色んな話がありすぎて、正直頭はまだ整理し終わってない。

だが、莉依を澤田なんかに渡してたまるか。

独りになんかさせねぇ。

翔樹side end