「ある日澤田が奇襲をかけてきて、凌佳ちゃんが誘拐されそうになったとこを間一髪、兄貴が助ける事が出来た。大事にはならなかったが、これからも凌佳ちゃんを守れるように…。危険を少しでも回避できるようにと白龍を創設した。」
当時の白龍幹部は、凌佳ちゃんの置かれた状況、兄貴の家の事などを理解していた俺を含めた3人が共に守っていたんだ。
樹さんも、孝さんも、創設のワケを知らなかったから、面食らっている。
兄貴は、後に続くことを勘づいてたのか、様々な対策を講じていた。
「皆の協力もあって、澤田は諦めたのか、高校卒業と共にパタリと無くなった。そして、兄貴と凌佳ちゃんは結婚し、莉依ちゃんを授かった。」
それはもう平和で、平和ボケしてしまいそうなほどだった。
勿論、油断はせずに気は張っていたよ。
「そして…10年前の襲撃事件だ。きっと、自分のものに出来なかった事から、逆上したんだろう。2人を撃ったんだ。」
凌佳ちゃんには、自分に愛を向けてもらえなかった事への憎悪。
功希には、凌佳ちゃんを自分から奪った事への憎悪を静かに燃やしていたんだ。
アイツの愛はものすごく歪んでいる。
「凌佳ちゃんの娘である莉依ちゃんに、何するか分からない。」
俺が話していると扉が開き、とある人物が入ってきた。
その人物に、俺を含めた全員が息を呑む。
まさかの人物だったのだ。
「お前…鴻巣か?」
「お久しぶりです、奏希様。莉依様に報告すべき事がありまして来ましたら、若干、姫野が手薄になっていまして。こちらに来させてもらいました。」
莉依様は部屋ですのでご安心をと言う鴻巣は、膝まずいて挨拶をする。
「話は聞かせていただきました。表ではそう公表されているようですが、真実はあなた方の予想を遥かに裏切るものです。」
そう静かに話し始めた内容は、澤田の信じがたい計画であった。
奏希side end

