奏希side
まずは、清宮と川城の車を裏に停め直させる。
そこに停めれば、莉依ちゃんの部屋からは見えないため、怪しまれることもない。
そしてまたホールに向かい、澤田の本当の狙いだと思われる内容を俺はこれから話す。
これは憶測も入るが、白龍が創設される前から始まった澤田の執着。
確実な内容も含まれている。
兄貴と義姉さんが身を呈してまで守った莉依ちゃんを、これ以上の深い闇に、絶対落とさせやしない。
「これは、白龍が創設されるきっかけとなった騒動だ。」
俺の言葉に、各組の組長、幹部や幹部候補か息を呑む。
「兄貴が凌佳ちゃんに一目惚れしたのは、樹さんも、孝さんもご存じですよね?」
孝さんとは、川城の組長の名である。
俺の言葉に2人は頷く。
「当時、高校1年生だった兄貴は、凌佳ちゃんと出会いお互い恋に落ち、兄貴は凌佳ちゃんを守るため、凌佳ちゃんは兄貴を支えるため、常に傍に居たんだ。その時はまだ、白龍を創設するとも考えてなかった。その創設のきっかけとなったのが…澤田國光だ。」
瞬時に、みんなの顔が強ばるのが分かった。
それと同時に疑問を持つ表情もみられる。
当たり前だ。
澤田との確執は、10年前の事件からではない。
20年も前からのものなのだ。
「どこで凌佳ちゃんを見たのかは不明だが、当時澤田組の若頭だった澤田國光が凌佳ちゃんを気に入り、しつこく付きまとうようになったんだ。勿論、凌佳ちゃんは断っていたんだ。心に決めている人がいると。」
それでも、自分のものにしようと澤田はしつこく凌佳ちゃんに迫っていたんだ。

