翔樹side
「親父!何で止めねぇんだ!?」
「姫ちゃん一人で背負わせる気かよ!?」
俺の言葉に龍也も続く。
だけど、親父も、川城の親父さんも、黙ってしまう。
何で止めないで頭下げんだよ…。
「莉依を…守りたいだけなのに…。」
しゃがみ込みながら、力無く俺は言葉を吐き出した。
「俺だって止めたかった。莉依ちゃんを守りたいさ。でも莉依ちゃんは…龍神会のトップのバッジを付けていた…。」
は?
バッジ!?
バッジって何のことだよ!?
俺が混乱していると、龍也の親父さんが口を開く。
「…龍神会のトップを表す金のバッジさ。かつては姫野の先代…功希が付けていたんだ。あの金のバッジは絶対的存在。我々のいわば会長ということさ。」
「親父、もしかして姫ちゃんが付けていたあれが?」
龍也の言葉に、親父さんは頷く。
「あのバッジを着けているということは、"私の事を信じて従いなさい。"という絶対的指示なんだ。姫野は今までそう言って裏切ったことはない。」
絶対的信頼があるかるこそ、逆らうことなど出来ない。
親父は力無く言う。
それは、絶対的信頼があっての強み。
莉依の親父さんはそうしてまとめあげてきた。
その娘である莉依も、その力と器を受け継いでいる…と。
「だからって…だからって一人でやらせるのかよ!澤田は何を仕出かすかわからねぇんだぞ!?」
「翔樹やめろ…。」
龍也が俺を止めに入る。
「龍也…てめぇ…。」
「親父達が従わなくちゃならねぇ立場なら、俺達は尚更逆らえねぇ。今の姫ちゃんはそういう存在だ。」
くそっ…。
俺は、何も出来ねぇのか…。
守ることも…。

