緊張が体を支配する。
けれども感情を殺し、組長として威厳を保つ。
自分に、大丈夫と暗示をかけるように深呼吸する。
私は姫野組組長。
化粧はアイラインをはね上げてキツめに。
スーツをビシッと来て準備は完了。
「莉依…大丈夫か?」
大和は心配そうに私を見る。
「何かあれば、大和が何とかするでしょ?」
「お前なぁ…、後始末大変なんだからな。」
おちゃらけるような口調で言うと、大和は呆れた声を出した。
「莉依ちゃん。」
後ろを振り返ると、奏希叔父様が立っていた。
「凌佳ちゃんそっくりだね。」
「本当に?」
「オーラは兄貴だけどな。」
オーラが父って…。
男っぽいってことか?
奏希さんの言葉に、思わずほほが緩んでしまった。
そんな私を見ながら渡してきたのは、龍神会のバッジ。
何で?
「元々は莉依ちゃんに託すものなんだ。龍神会会長の証の金のバッジさ。姫野組の強さを彼らは知っているから、これがあれば何があっても、清宮と川城は口が出せない。」
口角をあげながら妖艶に微笑む奏希叔父様。
どうも私の周りには、美しい人たちが集まるようだ。
「では組長、参りましょう。」
組員達に囲まれながら、会場となるホールへと向かう。
これから告知すること、今後進めていくこと、私が背負うもの全てやりきって守らなければ…。
ホールに入り、長い通路を抜け、各組が集まる部屋へと向かう。
この扉を開ければ、全てが始まるー…。

