「ここだ。」
親父の言葉に、総会の会場である姫野のホールに着いた。
相変わらずでけぇ敷地に、でけぇ建物。
親父から、姫野の先代は歴代最強で最恐の男でありながら、人望も厚く、白龍の創設者で誰からも憧れる存在だったと聞いている。
生きていれば手合わせ願いたかった。
ホールに入り、席に着きながら物思いに耽っていると、後ろから声をかけられた。
「よぉ、清宮の若。」
「なんだ、龍也か。」
なんだとは何だ!と憤慨している。
「たっくよー!あれから何の連絡もねーし、姫ちゃんの足取りは全くだし、そんな中親父に総会に出ろって言われるしでよ。こんな時ぐれぇ探させてくれよなって感じじゃね?」
「俺も親父に言ったよ。はっ倒されたがな。」
俺の言葉に吹き出す龍也。
このやろう…。
緊張感がない奴め…。
「おかしな話だよ。全く情報がねぇんだもんな。あの慶一郎でさえ出ねぇんだろ?」
「あぁ。情報のじょの字も出ねぇ。姫野も探してるらしいが、まだ見つからねぇって。」
「パーっと総会終わらせてやらねぇとな。」
そう言って、ニカッと笑顔を向ける。
こいつは何時なんどきでも、前向きに考えている。
ある意味尊敬するよ。
「おっと、そろそろ始まるな。」
そう言って龍也は親父さんが居る席に戻っていった。
「若、姫野組がまだのようですね。」
「5分前だぞ?おせぇな。」
そう小声で話をして居ると、ホールの扉が開き、男性の声が響き渡る。
「5分前というギリギリで申し訳ない。」
姫野の先代の弟、奏希さんだ。
一礼して、歩き出す…と思いきや、横に避けそれが合図かのように道を作る。
カツカツと音が聞こえ、次々と組員達が腰を曲げる。
その人物に、開いた口が塞がらなくなる。
周りに居る奴らも、親父達らも驚きのあまり声がでないようだ。
そこには、俺達が居場所を掴めなかった莉依が立っていたんだー…。
翔樹side end

