翔樹side
くそ親父。
何でこんな時に、総会なんか行かなくちゃなんねぇんだ。
莉依を探さねぇとなのに…。
中々足がつかめなくてイライラがつのる。
それなのに親父は、組長としての動きも確実に行っていて、若頭の俺にも出席しろと命じてきた。
必然的に組の幹部候補の晶、慶一郎、礼も出席することになる。
手が止まることにイライラが更に増す。
そんな胸中で車から降り、親父と総会が行われる姫野の敷地に入る。
「おい、翔樹。おめぇ、切り替えろ。仕事はどんなことがあってもやってもらう。」
「わぁってるよ!たっく…。」
俺の顔を見ながら呆れた表情の親父。
「組員総動員でやってんだ。仕事ほっぽってやらんでもいいだろ。」
ほっぽるだと?
このくそ親父…!
「あ"?莉依のこと心配じゃねぇのかよ!」
俺が怒りに任せて親父の胸ぐらを掴むと、足を払われ、投げられてしまう。
「っぐ…。」
「愚息が…。感情で動くな。足元を掬われるぞ。それに、心配しないわけねぇだろ。清宮幹部も動かしてるんだ。俺とお前まで動くと組が回らなくなる。やることはやる。仕事もな。下が動いているなら組長と若頭は、最終判断を下すまでだろ。」
親父の言葉に言葉が出ず、舌打ちをしてそっぽを向く。
感情で動いてしまっているのは分かる。
だが、これだけ探しても莉依の居場所や生存すらしているのかどうかも分からねぇ。
「今日の総会は、澤田の件のことだ。どう動いていくのかそこで決まるだろう。」
さっさと終わらせて、莉依の居場所を突き止めねぇと。
「慶一郎、何か情報は出たか?」
焦る気持ちを必死に押し殺し、俺は慶一郎に確認する。
慶一郎は、メガネに触れながら、困ったように話し出す。
「現段階では、何の情報も出てきていません。」
思わず舌打ちが出てしまう。
慶一郎でさえ情報が掴めねぇって…どういうことだ?

