朝早くから、また資料に目を通す。
まだまだ何冊もある資料に眩暈がしそう。

「おはようございます。姫、朝ごはんが出来るまで、紅茶を用意しました。」

「ありがとう、新。」

毎日の日課になりつつある、朝のティータイム。

糖分を体が欲していたから、ガムシロップを入れて飲み始める。

「新の淹れた紅茶は飲みやすいわね。」

熱さも、濃さも全てがちょうど良い。

「あの…。」

新は年上なのに、相変わらず敬語。
何故かそうなってしまうらしく、一種の癖みたいなもんだと以前聞いたことがある。

「新?どうしたの?」

「光の箱…、先代から何か聞いておられますか?奏希さんも知らないようでして…。」

「うーん。光の箱なんて聞いたことないわ。8歳までの記憶も怪しいし…。」

光の箱…。
光…。
箱…。

んー。

「light boxって言っても、そのまんまか…。」

「もう一つ。澤田はまだ何かありそうでして…。」

企みがあるということ?

新は顔を歪ませながら話を続ける。

「大和も感じているようですが、あの時の澤田、データの話をしていたのに焦る様子がなかったんです。余裕を持った表情でして…。」

あの時とは、翔ちゃん達とやりあっていた時のことね。

「確かに。データを欲しいとなれば、姫野組に攻め込んで探しだしそうなものを、奴はしなかった。優杏さんも、拐うことも出来るはずなのにやらない…持ってこいと言っていたわね…。」

「ただ、それがいくら探っても出てこないんです。澤田のデータベースを覗いても…。確信が持てない事案なので、憶測でしか言えませんが…。」