大和side

莉依…。
お前は何ですぐに抱え込むんだ。

両親を亡くして心を閉ざした幼き頃。
組の皆と清宮の皆の温かい気持ちのお陰でやっと太陽のような表情(かお)が見れるようになってきたのに…。

諸悪の根元は澤田だ。

澤田の狙いは、姫野の情報と優杏自身だと言っていた。

だがそれだけか?

あの澤田のことだ。
他にも何か企んでいるはずだ。

だが今は目の前にいる莉依のために、今までの姫野の資料に目を通す。

そんな時だ。

「大和!清宮の若達が、姫ちゃん居らんか?って来てん。どうする?」

「姫野に居るのではないか?とすごい剣幕です。陽介が止め役で居ますが…。」

翔樹か…。
厄介だなこんな時に…。

どうするか考えていると、莉依はこちらを見る。

その表情は"無"

「大和、私はここにはいない…、姫野でも探してる…、と伝えなさい。」

っ…どうして…。

莉依の今の表情は、幼き時の殻に閉じ籠った表情そのものだった。

思わず顔が歪んでしまう。
だが、組長の命令は絶対だ。

俺は目を閉じて深呼吸をし、莉依を見て言葉を発する。

「承知。」

莉依、本当にそれでいいのか?

組長になった今、後戻りはできないが、お前はもっと素直に動いてもいいんだ。

そう思いながらも、翔樹たちを待たせている客間に急ぐ。

ひと悶着ありそうだが、莉依の決意のために、組長のために俺は動く。