私は立ち上がり、涙を自分で拭って鴻巣さんの方へ振り返る。

凛とし、力強く私は言葉を発する。

「鴻巣泰我。」

そう名を呼ぶと、私の前に膝まづく。
その光景に、翔ちゃんたち、龍也さんは目を見開く。

さっきまで翔ちゃんたちと殺りあっていたとは思えないほどの行動。

あまりの衝撃に周りは動けないでいる。

「姫野組の…シークレット組員ね。」

正直、自分に何が出来るのかって言われたら、わからない。答えられないと思う。

だけど、私のせいでみんなが傷つくのはもう見たくない。
これ以上、巻き込みたくない。

「私に…、忠誠心を誓える?」

もし本当に裏切り者であれば、ここで私たちを始末するだろう。

でも今何も手を出さないということは、確実に姫野組のシークレット組員ということ。

膝まずいていた彼はゆっくりと話し出す。

「私は…、姫野に生涯を捧げるつもりで今まで澤田に潜入していました。功希さんの娘である莉依さんに、忠誠心を誓うのは当たり前です。」

「それは本心ね。」

私の言葉に頷く鴻巣泰我。

「…莉依…何言ってんだ…?」

「姫…。」

「姫ちゃん…。」

「…姫。」

ごめんね…みんなを守るには、私がみんなから離れなきゃなの。

姫野が…、私が決着を着けないといけない。

大好きな人たちを守りたい。

最初で最後だから…。
私は翔ちゃんのところに行き、キスをする。

「好きでした。守ってくれてありがとう。」

拭ったはずの涙が、また流れ出す。

翔ちゃんは言葉も出ず固まる。

「さよならー…。」

「!?ー…。」