「初めから小細工しないでお前を出すべきだったかな。」

澤田の声に反応するように、フードの男は組員を蹴散らしていく。

「お前ら邪魔だ。さぁ、今度は守れるかな?」

フードの男が、拳を翔ちゃんに向ける。

当たるか当たらないかのところで避け、翔ちゃんは相手に拳を向ける。

だが、軽々と受け止めたフードの男。

「なっ!?」

次から次へと、攻撃を避ける。

しかも、晶さん、慶ちゃん、礼ちゃんの相手をしながら。

「こいつ…何者やねん。ごっつ…強い。」

「攻撃を…軽く流してる。」

「一筋縄では…いかなそうですね。」

「おめぇ…ら、莉依には…指一本触れさせんなよ!」

みんなはまた、フードの男に立ち向かう。

でも、相手のが何枚も上手のようで、綺麗に避けられてしまう。

無駄の無い動きだから、フードが全く動かない。

翔ちゃんたちが押されてる…。

あまりの早さに、言葉を失う。

目の前には、晶さん、慶ちゃん、礼ちゃんが倒れている。

意識はあるものの、拳が重かったのか、立ち上がれないでいる。

「てめぇ!」

何とか拳を繰り出している翔ちゃんでさえも、顔やお腹に拳をいれられ、苦しそうにしている。

「や…めて…。」

やっと声が出ても、か細い声にしかならない。

「やめて欲しいか?」

澤田のねっとりとした声が耳に届く。
それと同時に震えが止まらない。

「姫ちゃん!」

「莉依!」

私の後ろから、龍也さんと大和たちの声がした。

龍也さんはきっと、咄嗟に晶さんが応援を頼んでいたのだろう。

でも、迂闊に動いたらダメ。
そう言おうと思ってるのに、声がうまく出せない。

「おやおや。姫野の騎士も来たのかね。お、中里の娘もいるじゃねぇか。」

行く手間が省けたな。
くくくっと笑い、澤田は続ける。

「まず、データを探し中里の娘と一緒に渡せ。出来なければ、お前と関わる全ての者を潰しにかかる。」

「そん…な脅し…に…乗るな。」

翔ちゃんは…、声を出すのもやっとだ。

なのに私は何やってるんだ…。