久々にこんなに長く、素の口調を見れるとは。
大袈裟に言うと、天然記念物並みに珍しい。
「まぁ、翔樹はお前のこと大切にしてるんだ。アイツは清宮を引っ張る立場、姫は姫野組を引っ張る立場。鶏と風見鶏って思ってて言わねぇんだ。全く、似た者同士というかなんというか…。」
「…痛いとこつくなぁ。」
その通り。
私は姫野を引っ張る立場。
翔ちゃんは清宮を引っ張る立場。
鶏と風見鶏…か。
「立場が立場だから伝えられないのもある。でも私は伝えてスッキリできたらいいと思ってるけど、その反面、言わない方がこの関係を無くさずにすむのかなって…。」
「姫は、この関係が壊れるのが嫌か…。」
そう。
私と翔ちゃんは、俗にいう"幼なじみ"。
…と言っても、家族みたいな…なんとも言い表せない感じ。
「それより!晶さんこそどうなのさ。満里奈のことが好きなんでしょ?」
しんみりした雰囲気が嫌で無理やり話をかえる。
「…仕事中なので、私語は慎ませていただきます。」
あ!!逃げた!
逃げたよこの人!
敬語に戻りやがった!
晶さんは、若が戻られたのでと言って立ち上がり後ろを振り替える。
つられて私も視線を動かすと、何やらものすごく不機嫌なオーラ満載の翔ちゃんが立っていた。
「晶、そこで何してる。」
晶さんは、いつもの柔らかい物腰で翔ちゃんに受け答えする。
「若、お疲れ様です。私は姫とお話しを少々。」
不機嫌な翔ちゃんの扱いが上手い気がする。
流石。
私も話をしてただけと言おうとしたが、体がふわりと浮かび、視界が天井になる。
うん。
私、お姫様だっこされてますね…。
何故にお姫様抱っこなのだろう。
て!
「翔ちゃん何してるの!?自分で歩ける!」
私の言葉も虚しく、翔ちゃんは晶さんにお前には神子芝がいるだろう。と言って私はそのまま翔ちゃんの部屋に連れていかれた。
晶さんは素に戻り、なら早くくっつけと呟いたのは、誰も知らない。