「その澤田は…、刑務所からでてるのよね?」

「えぇ。本来なら、無期懲役なはずだけど、脱獄したようね。日本の刑務官は何してるのかしら。重罪を背負った人を逃すなんて。」

脱獄…。
澤田國光ならやりかねない。

優杏さんも表情が一層険しくなる。

先程から嫌な予感で冷や汗が出ている。
もし…私の周りに危害が出たら…。

「…清宮も川城も巻き込んでしまう大きな抗争が起きてしまいそう…。」

もう、大切な人を失いたくない。

傷つけられるのも見たくない。

でも、私が居る限り、巻き込んでしまうことは間違いない。

「私、近々姫野に戻った方がいいかもね。」

私の言葉に、ここにいるみんなが驚く。

…そりゃそうだわ。
全く戻ってこなかった先代の娘が"戻る"と言ったのだから。

慌てる大和たちに対して、優杏さんはしばらく考えた後、とんでもないことを言い出した。

「なら…、一週間後がいいかもしれない…。」

え?
急な提案に驚いていると、優杏さんは言葉を続ける。

「姫野組組長が生きていれば、一週間後の21時が、報告日であった。私の勘が正しければ、その日、必ず莉依ちゃんの前に鴻巣が現れるはず。」

優杏さんが言うには、鴻巣は過去月に一回姫野に報告をしていたという。
毎月25日だという。

25日…?

「そして今年は、姫野組組長が無くなって10年。鴻巣泰我がきっと動き出すはず。」

「それは、刑事を辞めてでもやろうとしているということ?」

「確信は持てないけど、澤田を潰しにかかるはず…。」

そして、刑務所から脱走した澤田國光は、必ず私たちの前に現れる。

「大きな抗争が始まるのもそう遠くないわー…。」