「そう。当時の姫野組組長である姫野功希さんの命よ。」

大和は更に険しい表情になる。

「先代は、澤田組とグルだったってことか?」

はい!?
何でそうなる?

「大和はバカなの?この前私が清水組に拉致られたとき、清水組の若頭が、10年前お前の両親は澤田の不祥事を嗅ぎ付けたと同時に、清水組の不正をも暴いた…と言ってた。もし私の両親がグルだったとしても、澤田組には何のメリットもないと思う。」

そうなるならば、私の父が鴻巣さんに澤田に潜入しろと命じ、中里夫婦には情報を上書きさせた。

そう考える方が辻褄が合うかもしれない。

優杏さんの言う通り、鴻巣さんが姫野のシークレット組員ならば…。

でも、確信が持てない。

本当に鴻巣さんは、姫野のシークレット組員なのか…。

「てか、莉依?拉致られたってなんだ?」

振り向くと、大和を始め、芳樹、新、陽介が般若の顔をしていた。

ヤバっ。
そういえば知らせてなかった。

「清水組ったら、澤田の傘下やないか。」

「うちの莉依さんになんてことを。」

「大和、潰すか?」

「姫野に泥を塗ったんだ。やるべきだろ。」

ちょっと!
怖い顔で恐ろしいこと言わないで!

「大和、落ち着きなって。清水組の件は、莉依ちゃんがお世話になってる清宮組が片付けてくれてるわ。」

優杏さんの言葉に大和は落ち着きを取り戻す。

「優杏さんは何でそんなに詳しいの?」

最後に説明するわねって言ってたけど、詳しすぎる。

「確かに。私が調べられなかった情報を意図も簡単に…。」

新が前のめりになって聞く。

「私、両親の代わりに情報を守ってるのよ?」

ん?

ん?

さらに分からなくなってるぞ。
両親の代わりに情報を守ってるのよ?

訳が分からなくなっている私をみて、優杏さんは笑いながら答えてくれた。

「私ね、幼い頃から両親に情報操作や、消去、様々な事を叩き込まれたの。それで仕事してるのよ。」

「だから、優杏さんは簡単に情報を引き出せたのですね。」

優杏さんの話を聞いて、1つ分かったことがある。

澤田が優杏さんを欲しがっているのって…。

「…もしかして、優杏さん自身を欲しがっているということは、澤田はその情報操作力を知っているってこと?」

「えぇ。両親に娘であること、私にもその力があることを知っているみたい。ただ、居場所は突き止められなかったみたいたけどね。」

だけど、澤田は確実に私たちの近くに来るはずよ。

優杏さんの言葉に、1つの疑問が確実になっていく。