大和との話は終わりを迎えず、気が付くと車は大きな屋敷の中に入って停車した。

"姫野本家"

10年ぶりだからか、自分の実家なのに変な感じ。

「まだ中里夫婦の件も出てきてないからなぁ…。とりあえず分かり次第連絡する。」

わかったと答えると、私が出やすいように扉を開けてくれた。

大和が私の一歩後ろに下がって歩く。

普段外で会うことがあったり、電話でのやり取りをしているのに、ここで面と向かって会うことに緊張してしまう。

大和に客間に集まれるようにしてると言われ、私は急いで向かった。

優杏さん、私に話って何だろう?
大和の話からすると、切羽詰まった感じがする。

客間の扉を開けると、芳樹、新、陽介と美しい女性が立っていた。
きっと優杏さんだ。

「芳樹、新、陽介久しぶりね。」

私が挨拶すると、すぐさま反応し、3人はお疲れ様ですと返してくれた。
この3人は、大和が高校時代、白龍の総長をしているときの幹部たち。

今は姫野組の組員として、働いている。

「…あなたが、姫野…莉依さん?」

声のする方を見ると、美しい女性は涙を流していた。
私は突然のことに驚く。

この方は何故に泣く!?
私、車から降りて客間に来て挨拶していただけだけど!?

「あの、あなたにお会いするのは初めてなはずですが…。」

大和から彼女の名前は聞いていたが、本当に会ったことがなかったから、泣き出した彼女に本当に驚く。

「優杏、莉依のこと何故知ってるんだ?」

大和も驚いている。
そりゃそうだ。

会ったこともない私を見て涙してるんだから。

とりあえず座ろうと言う大和の言葉に反応したあと、涙を拭き優杏さんは話し始める。

「ごめんなさい、取り乱したわ。それよりも話が先よ。用件は3点。」

私たちの疑問を残したままだったが、まずは話を聞いてからにしなくては。

「1つ目は、中里夫婦のこと。2つ目は、澤田の狙っているもの。3つ目は、鴻巣泰我について。」

…ん?
何で中里夫婦のこと知ってる?
鴻巣さんのことも何故?

私が大和に向くと、知らないと言うかのように、首を降る。

「質問は説明のあとで。まず1つ目の中里夫婦について。」

優杏さんは、強い眼差しを私たちに向けた。

「新が調べていた中里裕翔と中里杏里は…私の両親。そして…姫野組のシークレットの組員。」

「え?」

「は?」

「はぁ?」

「はい?」

「…は?」

私、大和、芳樹、新、陽介の順に声が出るが、優杏さんは止める様子もなく話を続けた。