くすぐったくて自分が自分じゃないみたいな、無性に頬を摺り寄せて抱きしめたくなるような、温かい感情が溢れて心を満たす。世界の色が増える。すりガラスの奥の青空が私の視界の隅で眩しく輝く。明るい世界。部屋の空気がすうっと透き通った水みたいに変わる。
今までこんなに一瞬のうちに、全てを悟るようなことはなかっただろう。
ああ、ああ、私なら絶対こんな顔させない。
藍子より君のこと大切にできる。大切にしたい。
私も藍子と同じだった。君が苦しいと私も苦しいって思う。
私も、私もね、真広のこと、好きなんだ。
だからこれ以上苦しめたくないから、私はなにも言えない。
告白なんて重い期待はかけないから。



