私が尋ねると、真広は少し柔らかい表情になった。
「うん、大丈夫」
あ、ちょっと笑ってくれた。
「でも本当に良かったの? 俺が食べて」
「今更。桐江くんには早くここから出て休んで欲しいから」
「外に出てもなにもないよ。祝福も、待っている人も」
「そんなことないよ」
祝福なんていらないよ。少なくとも私はね。
これであの時苺を盗んで食べたあの罪悪感が晴れるなら、少しは......。幽閉だってきっと、なんとかなるって、信じてる。
幽閉が怖いなんて二人に知られたら、もう平和にはやっていけない。
真広も苺を食べて助かる決断をできない。
震える手を合わせて気持ちを抑え込む。
大丈夫だよ......。大丈夫。



