そうは思ったが、真広は考えても思い出せないらしかった。
けど、そのうち思い出すだろう。
まさか脱出ゲームとか、そういうオチではないだろうし。
と、そこで真広が「あ」と声をあげた。そしてブレザーのポケットから、白のケースに入ったスマートフォンを取り出して見せた。
私も藍子も制服のポケットを触ったが、スマートフォンは持っていなかった。良かった! これで出られるよ、ここから。
「助けてもらうよ。誰か呼んで」
「うん、ありがとう......!」
私がお礼を言うと、真広は「いえいえ」と優しく笑ってくれた。
しかし、現実はそこまで甘くはなかったのである。



