真広がいなくてよかった。 ぐっと涙を堪えて、私を見ていてくれる藍子から目を逸らす。 「桐江くん、遅いね。大丈夫かな」 私はただ確認するためにドアを開けたつもりだった。 だがこの瞬間から、不測の事態が私達を混乱させることになる。 この時の私はまだ知らなかった。 このゲームが、九年越しの私達の再会がどういうことを指しているのか。 ――――私の本当の役目も。 「桐江くん......?」 真広は右手にナイフを握り、未だ苺が入ったままの瓶が置かれているテーブルの前で倒れていた。