横のひび割れた窓から車体の外を見れば、悲鳴を上げる人や、突然の事故に止まった他の車両。一人のドライバーと目が合う。その男性も顔面蒼白だった。
なんだ? なにが、起きてる?
頭が、思考が、追いつかない。
母さん? 父さん?
ああ、事故だから、警察。救急車。
スマートフォンをポケットから取り出して、電話を開く。手の震えが止まらない。番号が押せない。
どこかからシューという空気が抜けるようなガスが漏れるような嫌な音がしている。これ、早く逃げないと、危ないんじゃないか。死ぬんじゃないか、俺。いや、俺だけじゃないだろ。母さんも父さんも。死んでないだろ、まだ。まだ、まだ、間に合う。
息が荒い。自分の呼吸がおかしくなっていく。
気づいたら過呼吸になっていた。



