「食べないの?」
「うん、私、悪いことしたし。やっぱり食べられない」
れみはなんだか悲しそうだった。
悪いこと、という言葉の響きが俺の胸を打った。
唐突に突きつけられた現実。れみはまだそんなことを考えていたのか。いや、まだ水に流せないでいるのか。
俺は細かいことは気にしないから、そんなのもうどうだっていいと思っていた。だって要は、俺が口を滑らせなければ誰も何も分からないんだから。
嘘をつくことがどれだけ悪いことか、分かっているつもりだ。
でも嘘をつくことの大切さも、今この時分かった気がして。
「俺言わないから。絶対黙ってるから! れみちゃん、また遊びにおいでよ。待ってるから」
れみのこと守ってあげたい。
まだ小さな頭の俺はこの時それだけしか考えられなかった。



