左耳に携帯を当てて、その時を待つ。

頭の中で流れる鮮明な映像。すぐ、真広のスマホが音を立てて鳴った。
画面に表示された俺の名前を見て少し戸惑ってから、真広が電話を受ける。


〈はい、もしもし〉


画面の奥から聞こえる声が、あまりにも懐かしい。
自然と涙が出てきて、頬をなぞった。泣くのは、あの日以来か。京極が死んだと知った日以来だ。

もう何十年も経つんだ。

ずっと消えない悲しみよ。
俺があなたという人を愛した証よ。