久しぶりに、真広の声が聴きたい。
直接は会えない。まだ、会えない。


「そっか......どうしよう。あたし達、閉じ込められてるってことだよね? なんとかしてここから出ないと」

「思い出せない? なにも」

「............うん、ごめん」

「いいよ、無理にとは言わないし」


畑の真ん中で、土の上に腰を下ろした。

目の前にあるのは、横に長く、土の段を覆う、黒のマルチシート。その上に並ぶのは、大きな葉のついた茎の先にある可愛らしい赤い宝石達。苺が今年も、多く実った。津由が喜ぶだろう。津由にも、後で、会いに行きたい。

携帯を少し操作して、電話番号を打ち込む。