ちらりと見るだけのはずだったのに、俺は一度目をつけてから、何かに取り憑かれたみたいに目を離せなくなってしまった。
そしたら、二、三メートル先にいた少女が、こちらに歩いてきた。
驚いて視線を移せば、俺の隣を通り過ぎる位置でもない。まっすぐ、俺の方に近づいてくる。そして目の前で立ち止まった。
なにも聞けなかった。
どうしてこの人が、俺に用があるのか。
「桐江悟志さん?」
胸にストンと落ちていくような、綺麗なさっぱりとした声だった。
「兄が、お世話になっていました。京極勝の妹です」
「あ、どうも」
反射的に返した。
そうか。会ったことあった。この子は、京極の妹。冬に一度だけ見た。あの時は髪を下ろしていて、制服も冬のものだったから、分からなかったんだ。
「どうも、っていうのもおかしいか。同い年らしいですね。あはは」



