ポタ、ポタと静かな音がした。濃い赤色の液体が、少し汚れたカーペットに斑点模様を作って増やしていく。洗わ、ないと。じゃないとばあちゃんにまた、手間をかけさせるから。
手首切ったこと、心配かけるだろう。
いや、もう、そもそも生きているだけで俺は心配だ。
迷惑の塊だ。俺がいなきゃ、ばあちゃんは自由だった。......違う。それじゃ俺がまるで望まれてない子供みたいだ。最初から俺の事なんて育てたくなかったみたいな。
「そんなわけないだろ!」
自分で自分に言い聞かせるように大きな声で叫んだ。包丁を落とすと、カーペットを貫いて床に刺さったまま立った。息が荒い。台所の窓から覗く月明かりを見れば、わけもわからない悲しみに襲われた。哀愁。孤独。一匹の獣のような自分。
涙が、また溢れてきた。



