苦しくて何も出来ない。
死んだ方がマシ。自殺、したくなる。
無心で立ち上がり、よろめきながら歩いていく。
台所の、まな板の立ててある隣にあるギラギラした銀色の包丁が、暗い中で俺を誘惑するから。柄を握り目の前に持ってくれば、懐かしい血の匂いがどこからともなく流れてくるんだ。
昔もよくやった。
じいちゃんによく怒られた。
露出した手首に当てた鋭い刃先から伝わるひんやりとした熱が心地よい。
時計の針の音が響いていた。俺は何も考えずに、包丁を持つ右腕を右に引いた。そしたら音も何もしないまま、一本の赤い線が滲んできた。じわじわと痛みが後を追う。
次第に溢れた血が腕の形をなぞって、重力のままに床に落ちていく。



