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意識が覚醒するとスマホを両手で握りしめて体を丸め、畳の上に蹲っている自分に気づく。顔を上げれば地面の上に落ちた黒の固定電話の受話器。
涙が止まらない。何故だか分からない。
ああそうか。
祖父が死んだ。死ぬ。死んだ。死ぬんだ。死ぬ、死ぬ、俺も死ぬ。
階段から落ちたと知った時に調べたろ。頭を強く打って、あの時祖父に何もなかったわけがなかったんだ。祖母が先ほどかけてきた電話の内容が今更思い返されて、脳みそを抉る。
『頭の中で出血があったみたいなの。私が来た時には、意識がなくて、今から緊急手術になって......』
これから、自分、一人で。
祖母を支えていかなければならない。
祖母がいなくなったら一人になってしまう。
そしたら俺はどこにいくんだろう?
誰に頼ることもできない。



