すぐに藍子に電話をかけた。ニコール目で、電話は繋がった。
「藍子ちゃん!」
〈怜美......!! ねえ、真広は......〉
藍子も真広のこと覚えていたんだ、と安心した。しかし同時に、彼女の口から「真広」という名前を聞くのが少し嫌で。
取り残された私と、外に出た藍子、真広。
あの時私は、それがこの先のことを暗示しているような気がして居たたまれなかった。この先藍子と真広が付き合って、私だけが......邪魔者になるような。
......なんて、なにを考えているんだろう、私は。
今はそんな時間もないのに。
記憶を辿る。真広はここに来る前、おばあさんと電話をしていた。家の固定電話で。
泣いていることを悟られないように、涙を右手で拭って落ち着いてから答えた。
「電話してたんでしょ? 直前に。家にいるんだよ、きっと」
〈あたし、家の場所分からないよ〉



