桐 江 真 広
言葉にならない歓喜の呻きを吐き出す。人が通らない道に、私の声が寂しく響き渡った。
瞬きをすれば次々に溢れ出てくる透明な雫。頬が熱い。鼻の奥がツンとした。
これが“縁”だったのか。
罪を償ったからこそ私達が得られたもの。
無駄なんかじゃなかった。真広が今の今まで苦しんだことも、藍子の恋心を分かりながら優先した好意も、真広のおじいさんの想いも、もう一度だけでも真広に、会いたいという私の願いも。
夕焼けが終わる、そのわずかな時間の奇跡。狭い住宅街も、限りなく続く空も、その終わりに連なった山々も吞み込んで、辺り一面が青みがかった光に包まれる。まるでフィルターがかかったみたいだ。
雲の無い静かな、空気の澄んだ日の、ブルーモーメント。



