俺は「うん」と頷いて笑った。心臓がばくばくしていて、顔が引きつる。まだ頭が追い付いていない。何故か、目頭が熱くなって体が震えるくらいの、安堵がこみ上げてくる。しんどい、なあ。
祖父とはあまり連絡を取っていなかった。
泊まりに行くのはもう少し先で、それまで忙しくて電話もできていなかった。電話はあまり好きじゃないと祖父が言うから、いつも受話器の奥にいるのは祖母だった。
本当は話したかった。
俺知ってるよ。どこかで聞いたことあるんだ。
人って、誰かを忘れるときは声から忘れていくんだよ。
......母さんの声も父さんの声ももう思い出せないから。



