控えめに聞くと、祖父は少し笑った。
「これから、自分が世話をされる番だと思うと嫌だからな」
「寂しくない?」
「ははは、誰が!」
少しからかえば軽くあしらわれた。
ああ、こうでなくちゃ。これが俺のじいちゃんだ。
「ありがとう」と頭を下げる。嬉しかった。
冬になると祖父はたまに、ストーブの上にやかんを置いて湯を沸かして、温かい飲み物をつくってくれた。二階の俺の部屋まで来て、わざわざ運んでくれた。いいよと言っても「落ちたら俺のせいだろ」と訳の分からないことを言ってきかなかった。受験生の前で「落ちる」というのは死語だというのに。
受験という戦いを、なんだかんだ一緒に戦ってくれていた。
俺はひとりじゃないんだと思った。
その後俺は受験に成功し、行きたい高校に行くことができた。農学の専攻がある高校だ。俺も将来は農家になりたい。祖父の姿をずっと見ていた。ずっと憧れていた。



