ストロベリー・ゲーム


祖父が俺のところにやってきて、俺の目の前にしゃがんだ。
霊安室の周辺だから静かに、と注意しに来た人の方に一度振り向くと、それを手で制して。


そこで顔を上げて初めて、祖父の顔を見た。祖父は泣いていた。赤くなった目が潤んで、流れた涙の透明な筋が頬の上に残っていた。それを見た瞬間、ぐっ、と喉の奥で息がつまった。怒鳴られたわけでも宥められたわけでもないのに、俺の中の獣は静かになった。


「真広ぉ」


嫌いだったんだ、祖父のこと。
だけどいつからか憧れていた。この人は強くて優しい。

荒れた呼吸をしながら祖父を見つめる。肩が上下して、目に映る祖父の姿も揺れていた。



「お前、えらいな。泣かなかったのか」



俺は誰も守ってない。助けてない。
それなのに笑って、その皺だらけの大きな手で頭を撫でてくれる。

俺はもう叫ぶことなかったけど、代わりに涙が溢れて止まらなくなってしまった。