ストロベリー・ゲーム


後部座席にいた俺は混乱で、痛みこそ忘れていたが、飛んできたガラスで手を切っていた。処置を受けてすぐに解放されると、祖父母が処置室の外で待っていた。俺は祖母に抱きしめられたけど、なにも感じなかった。


父と母は即死だった。

遺体は損傷が激しく直視できるような状態ではないと、誰かが言っていた。葬儀社の担当の人か、刑事か。

霊安室に行き、顔は見ない方がいいと言われた祖父母だったが、二人はそれでも、と言って柩を開けて見た。祖母は声をあげて泣いていて、祖父は自分の子供とその妻の変わり果てた姿を見て、立ち尽くしていた。霊安室の外から俺は、祖父母の背中を見ていた。


大事な人だったんだ。

祖父母にとって二人は大事な人だったんだ。

大事な人でもいなくなるのか。



その事実が俺を支配して、何故か強く心を揺すられた。冗談じゃないくらい強い激動が俺を襲った。両親の急逝に対する悲歎、ひとり残された虚無、先の見えない未来への憂懼。瞬間、俺は自分自身の鼓膜さえ劈くような、声にならない叫びをあげた。

「うわあああああああああああ!!」