「わけ、わかんないなあ」


汗をかいて、震える手でこめかみのあたりを抑え、荒い息をする真広をただ茫然として、見ているだけだった。
何も言えなかった。言って何になる? 守る? どうやって。

真広が好きだ。でもたぶんあたしには無理だ。
そして次の瞬間、あたしはそれを本当に、確信するんだ。

「あ」


思わず声が漏れた。

怜美が、あたしから離れてそばに寄って真広のことを抱きしめたからだ。

息が止まる。ぐっと胸が熱くなる。この感情は言葉にならない。
感動よりももっと深い。嫉妬よりももっと柔らかい。喜びよりも汚くて、悲しみよりも救われる。

たまにね、怜美には驚かされるんだ。