「桐江くん?」 「ん? ああ、ごめん。なに」 我に返ったように、私の方を振り返る。 ふんわりと髪が揺れて、苺の香りがした。 ここに来て、そんなに嬉しそうな顔をしたの、初めてじゃない? 喉の奥まできていた言葉を呑み込む。 「......なんでもないよ」 「そう」 「結局振り出しに戻ったってこと? かな」 藍子が覇気がない声で言った。 「いや、分からない。ルール通りなら俺らは解放されるけど......怜美をこのままにしておくのは、駄目な気がする」