さくらside


こんにちは!
私は藤城 さくらです。高校1年生!

突然ですが、私今、彼氏に浮気されてます。

彼氏の名前は岩橋 海里っていうの。
イケメンで、頭も良くて、運動もできる。
これだけ揃ってるから、学校中からモッテモテ。
私も小さい頃から幼なじみの海里が好きだった。
そんな海里に高校生になって告白されたの。
私もずっと好きだったから、すっごく嬉しかった。
付き合って3ヶ月はラブラブだったのに、今では私に見向きもしない。
彼女がいるのに他の女の子と放課後デートしたり、家に入れたり...
今だって、クラスの女の子とイチャイチャしてる。

でも、浮気されてもまだ好きなままでいる私もどうかしてると思う。

今日も、海里に
「一緒に帰ろう」
そう言った。

でも海里は
「無理。なんでお前と帰らなきゃいけないの。」
そう冷たく言い放った。


なんで、って付き合ってるのに誘っちゃいけないの?
そんなの付き合ってるっていうのかな。
そもそも、海里が私をほんとに好きなのか、わからなくなってきた。

「イチオウ彼女なんだからもうちょっと優しくしてあげなよぉ〜」

海里と一緒にいた女の子がそう言った。

イチオウって...
ちゃんと彼女だから!一応じゃないから!

だけど、海里は何も言わずに黙ってる。

なんでなにも言わないの?
私、海里の彼女じゃないの?
なにも言ってくれないことがショックだった。



私には、最近決心したことがある。
1週間後、私たちは付き合って半年になる。
だからデートしようって海里を誘うんだ。
断られたら、、、



別れる。
それだけ。明日誘おうと思ってるんだ!



翌日



今日は海里をデートに誘う。オッケーしてくれるといいな。だって.....ほんとは別れたくなんかないんだもん。
キンチョーする。

「海里」

「何?」
まるで迷惑だとでも言うように顔をしかめて冷たく聞き返してくる。

でも私は怖気づきそうなのをこらえて続きを言った。

「今度の日曜日、デートしよう?」

あえて、半年記念だとは言わずに。

「は?嫌だよ。なんで俺がお前とデートなんてしなきゃいけないの。」

そう言われ、あー、もうだめなんだな。そう感じた。
別れよう。そのほうが、お互いのためだ。
私ももう傷つきたくない。

「わかった。もういいよ。明日の昼休み、屋上に来て。」
私はそれだけ言って、自分の席に戻った。

涙が溢れそうなのをこらえて。

そんな私には、

「わかったって何が...」
そう呟いた海里の言葉は聞こえなかった。




海里side


「わかったって何が...」去っていった彼女の後ろ姿にそう呟いたが、返事は帰って来なかった。

俺には、愛してやまないかわいい彼女がいる。今の子がその彼女。

藤城さくら

彼女の名前。幼なじみのさくらのことが小さいときからずっと好きだった。
高校に上がって俺はさくらに告白した。
オッケーもらえるとは思ってなかったから、飛び上がるほど嬉しくて、思わずさくらを思いっきり抱きしめた。
その時のちょっと照れたような赤い顔がものすごくかわいかった。

さくらはかわいい。おっとりしてて、みんなに分け隔てなく優しいから、めっちゃくちゃモテる。

俺はそれに嫉妬した。さくらにも嫉妬されたくて、他の女と放課後でかけたり、さくらの前でイチャイチャしたり。
その時の嫉妬して傷ついた顔が嬉しくて可愛くて、やめ方がわかんなくなった。

さくらがデートに誘ってきたときも、すごく嬉しかったのに、思ってもない冷たいことを言って後悔した。

あとで謝ろう。それで、日曜日デートしよう。
そう思った。

そして俺は明日、自分の考えが甘かったと知る。
今日のこの出来事を一生後悔することになるとは知らずに。
さくらの言った、「わかった」の意味を知らずに...。




さくらside



デートの誘いをことわられた翌日。

私は屋上で、海里を待っている。
別れを告げるために...


ガチャッ

屋上の扉を開ける音がして振り向くと、そこには面倒くさそうな顔をした海里が立っていた。

「こんなところに呼び出して、何の用?」

不機嫌そうにはそう言って私を見た。


キミは最後の最後までそうなんだね。


「うん、ごめんね。すぐ終わる。」

私は一度深呼吸をして、一息に言い放った。


「海里、私たち、別れよう。」

私が言い終えて、安心していると、

「なんで...」

そんな海里のか細い声が聞こえた。

「なんで...って、そんなの、海里がいちばんよくわかってるんじゃないの?」

「っ...それは...っ」

そこで言葉を止めた海里。


「海里は、私のこと好きじゃないでしょ」

「そんなこと無い!好きじゃなかったら、告白なんてしない。俺はさくらだけが好きだよ。」

「じゃあなんで浮気するの?どうして私に冷たいの?」

「それは、、、さくらが男子にモテるから、嫉妬して...さくらにも嫉妬してほしくて...」

「そう...だったんだ。。。」

驚いた。全然知らなかった。海里がそんなこと思ってたなんて...

でも...

「さくら、今までごめん。たくさん傷つけて。でも俺、さくらと別れたくない!もう二度としないから、もう一回、俺と付き合って...」

「ごめん、なさい...」

それは、できないよ。

「なんで...もうさくらは俺のこと、嫌いになっちゃった?」

そんなことない。今でもずっと海里が好き。

「海里のこと、嫌いになんてなれないよ。今でも好き。」

「だったら...!」

「でも!海里は私がどれだけ傷ついたかなんて、わからないでしょ?わかりっこないよね。」

そう。海里に私の気持ちも傷の大きさも分かるわけない。

「それは...っごめん...。」

私はたたみかけるように言った。

「もう海里のこと信用できなくなっちゃった。好きだけど、信用できない。したくない。そんなの、付き合っても虚しいだけだよ。」

「それでも!俺はさくらの彼氏でいたい。さくらに彼女でいてほしい。」

海里は泣いていた。
なんで海里が泣くの?泣きたいのは私の方だよ...

「ごめん、海里とはもう付き合えない。ばいばい!」


「さくら!」

涙を流しながら帰る私に届いた、海里の涙に濡れた声には聞こえないふりを決めこんで、一度も振り返ることなくその場を去った。




お互いがお互いを好きなのに、過ちのせいで終わった二人の関係。
海里に残ったものは、ただ一つ。

『後悔』

ただそれだけ。
これから先も一生消えないものになる。

                 End