さよならセーラー服


初めてだった。秘めていた気持ちを表に出したのは。

は?と眉間の溝を深め、何言ってんだこいつ?暑さでやられた?とでも言いたげな表情を見せる佐川に、さらに言葉を重ねる。


「センセーが行きたい場所だよ」

それでもなお意味がわからない、と困惑の色を浮かべる佐川。


そりゃそうだ。私の進路希望用紙なのに私の行きたい大学が書かれていないこと自体が不思議だ。


「正確に言えば、センセーがわたしに受かってほしいって思ってるところ」


こんなことを思うなんて、もしかしたら私は捻くれているのかもしれない。

そんな思いが頭の片隅に浮かびながら、窺うように隣を見上げた。


佐川は、じい、と進路希望用紙に目を落としていて何を考えているのかわからず、このまま沈黙が続くのか、と耐えられなくなったところで。

「いいよ、この話忘れ──」

「じゃあ広瀬がホントに行きたいとこは?」

こんなこと言ったって困るだけ。
だから、もう、終わらせようと思ったのに。

言い終える前に真っ直ぐな声に遮られ、視線がかち合う。



私が本当に行きたいところ。

その言葉を頭の中で反芻して。


「……ここには書いてない、かな」