わたしたちは学校という名の箱に閉じ込められていて。
毎日繰り返される日常に飽き飽きして、どうにかそこから離れたくなった。どこか、遠いところへ逃げたかった。
「だから、ありがとう」
ん?と不思議そうに眉を上げる佐川に向き合う。
「連れ出してくれて」
海を目の前にしたら、じぶんの世界なんてずっとずっと小さくて。
悩みなんて一瞬にして吹っ飛んでしまう。
ぐい、っとサイダーを喉に流し込んだ。
制服の袖を捲り、ペラペラなリュックのファスナーを開けてペンケースを取りだした。いつもは教科書や参考書が窮屈そうにつまったリュックも、今日ばかりはペンケースを取り出してしまえば中身は空っぽに近い。
ボールペンを取り出して、手を滑らせる。
もともと書いてあった第1希望の大学には二重線を引いて、その横に新しく未来を描く。
「できた……っ」
白い紙を空に翳して。
「これでどう?」
「いいんじゃね」
口角を上げて満足気な笑みを見せる佐川に、わたしも自然と笑顔になる。



