「俺はさ、夢とかやりたいこととかまだ決まってないからテキトーに近いとこ進学しとこっかなーって感じだけど広瀬はちがうじゃん」
「せっかく好きなことあって、それをしたいって思ってるんならそれしなきゃ損じゃん」
ふう、と深呼吸をして下げていた視線をそっと上げれば、こちらを真っ直ぐに見つめる瞳。
佐川は私から視線を逸らしてサイダーを口に含んだ。
「やっぱりそうなのかな」
ぽつりと零せば、「ん?」と言う声が返ってくる。
「周りに反対されてでも自分の夢を追うべきなのかなーって」
ちょっと、混乱してる。
サイダーを片手に、自分の進む道があらかじ決められていたらいいのに、なんてふと思う。
そうしたらこんなことで悩まずに済んだのに。
「俺、広瀬の絵見たことあるんだけど、」
少しの沈黙の後、隣から零された台詞に目を見開く。
「えっ、いつ?」
「一年のとき」
覚えてねーの、と独白のように呟いた彼に、ふるふると首を横に振る。
「ほら、職員室前に飾られてたじゃん」
「……思い出した、かも」
記憶を辿れば、うっすらと思い浮かぶ二年前の光景。
『すげー』と零したその声は今よりも幼くて。
わたしの絵を前に立ち尽くす男の子。



