目の前に広がる景色を瞳に映して、それから軽く目を瞑る。
瞼の裏側に映し出される青と、打ち寄せる波の音、匂い。
「久しぶりにこうやってぼうっとしたかも」
ゆっくりと目を開ければ、少し眩しくて思わず目を細めた。
カラン、とサイダーの中にあるガラス玉が音を立てる。
ただ視界に入る景色を眺めながら、時折吹く風によって顔にかかる髪の毛を耳にかける。
「いい場所でしょ、ここ」
自然と上がる口角とともに、相槌を打つ。
パンクしそうなほどの情報で溢れかえっている脳と心。
ザブン、という波の音が、全てをかっさらってくれている気分になる。
「さっきのことだけどさ、広瀬はそれでいーの?」
ソーダを一口飲んだ佐川に問いかけられる。
さっきのこと。
一瞬なんのことかと思考を巡らせ、すぐにそれがなにを指すのか訊かなくてもわかった。
「……よくはない、けど」
そこまで言って目を逸らした。
「けど?」と続きを求められ、言葉に詰まる。
よくはない。このまま単にセンセー好みの大学に行ったとしたら私はきっと後悔する。自分の行きたい大学に進学したいし、そうするべきだけど。
口を閉じたまま、ひざの上で握りしめている拳に視線を落としていると。



