青い夏の、わすれもの。

深月さんを見送り、爽と2人になると、爽は意味深な発言をした。


「あれは、完全にクロだな」

「えっ?」


意味が分からずわたしが聞き返しても爽は何も答えてくれなかった。

そして、話題はいつの間にか魁くんの話になっていた。


「魁さぁ、澪のコンクールは何が何でも行きますって息巻いてたくせにねぇ、今朝になって38度も熱があるから行けないとか言い出してさぁ。ほんと情けないよねぇ」


38度の熱と聞いてわたしの胸がどくんと跳ねた。


「えっ?!魁くん大丈夫なの?」


部屋中に響き渡る大声を出してしまい、皆から白い目で見られた。

それもそのはず。

さっきまで緊張で蚊の鳴くような声で会話して背中を丸めていた人が急に大声出すんだから。

驚かせて申し訳ないけど、わたしもわたしで驚いたんだ。

こればかりは仕方がない。


「澪、全然心配いらないから。さっき病院行って薬もらって来たって。...ほら、これつい3分前の写真。妹ちゃん撮影なんだけど、薬飲んでめっちゃ清々しい顔して寝てるから大丈夫だってさ」


確かに魁くんは掛布団を蹴っ飛ばしてニコニコというよりはニヤニヤしながら寝息を立てているみたいに見えた。


「ぷふっ。魁くん面白い...」


わたしは思わず吹き出した。


「良かった。澪が笑ってくれて」

「えっ?」